Difensin遺伝子導入による歯周病に罹患し難い生体を作るプロジェクト

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15659499
• 研究機関: 東京歯科大学
• 研究代表者: 井上 孝 東京歯科大学, 歯学部, 教授 (20125008)
• 研究分担者: 細矢 由美子 長崎大学, 大学院・医師薬学総合研究科, 助教授 (80112803) ; 山田 了 東京歯科大学, 歯学部, 教授 (20103351) ; 松坂 賢一 東京歯科大学, 歯学部, 講師 (70266568) ; 安彦 善裕 北海道医療大学, 歯学部, 助教授 (90260819)
• キーワード: β-Defensin / 付着上皮 / インプラント周囲上皮 / 抗細菌性ペプチド / 生体防御 / 遺伝子治療 / 予防歯科 / mRNA

研究概要

口腔を覆う粘膜は、抗細菌性ペプチドであるβ-Defensinの発現を持つ上に、厚い角化物に覆われる口腔粘膜には細菌性の炎症は起きない。もし、粘膜に炎症が起きても細胞間隙は拡大し、好中球(α-Defensin発現)の細胞間浸潤遊走と粘膜上皮のβ-Defensinの発現が増加し、生体防御に寄与していることが最近わかってきた。しかし、非角化性の付着上皮やポケット上皮、移植歯の周囲上皮やインプラント周囲上皮、さらには、歯髄の炎症により惹起される歯根嚢胞の裏層上皮などでは好中球の増加はあるものの、上皮細胞に抗細菌性ペプチドの発現または炎症による増加があるか否かは全く不明である。近年では、遺伝子工学や分子生物の発展に伴い口腔領域においても、強い宿主を作ることで細菌への応答が可能になれば歯科予防概念は変わり、インプラント治療などの予後にも大きな影響を与える。本研究では、β-Defensinが生体の防御機構を補助する重要なタンパクであると仮定し、β-Defensinの遺伝子を標的上皮細胞に導入することで宿主サイドから予防治療の効果を高めることである。
平成15年度は、β-Defensinの局在を免疫組織化学的に検索し、口腔粘膜上皮の角質層直下に多くの局在が見られるのに対し、付着上皮にはまったく見られないことを明らかにした。しかし、ポケット上皮やインプラント周囲炎を起こした上皮にはβ-Defensinの発現が強くなることも見出した。つまり、β-Defensinは細菌感染の起こる場所には必ず発現がみられ、歯周病およびインプラント周囲炎を予防するために、本研究で目的としている宿主サイドを強化する必要性が示唆された。

研究成果

• [文献書誌] M.Yoshinari, K.Matsuzaka, T.Inoue, Y.Oda, M.Shimono: "Effect of multi-grooved surfaces on fibroblast behavior"J.Biomedical Materials Research. 65. 359-368 (2003)
• [文献書誌] K.Matsuzaka, X.F.Walboomers, M.Yoshinari, T.Inoue, J.A.Jansen: "The attachment and growth behavior of osteoblast-like cells on microtextured surfaces"Biomaterials. 24. 2711-2719 (2003)
• [文献書誌] M.Yoshinari, K.Matsuzaka, Y.Kitazawa, T.Inoue, Y.Oda, M.Shimono: "Properties of carbon-foam scaffold coated with titanium for tissue engineering"Biomedical Res.. 24. 195-203 (2003)
• [文献書誌] H.Ikumoto, K.Matsuzaka, T.Inoue, T.Uchiyama, M.Yoshinari: "The behavior of osteoblast-like cells on different crystal systems of calcium phosphate ceramics in vitro"Biomedical Res.. 24. 239-248 (2003)
• [文献書誌] K.Ishizaki, K.Sakurai, Y.Tazaki, M.Tazaki, M.Shimono, Y.Suzuki, K.Matsuzaka, T.Inoue: "An experimental study on the behavior of Merkel cells under a palatal plate"Prosthodontic Research and Practice. 2. 59-63 (2003)
• [文献書誌] K.Matsuzaka, M.Yoshinari, M.Shimono, T.Inoue: "Effects of multi-grooved surfaces on osteoblast-like cells in vitro : scanning electron microscopic observation and mRNA expression of osteopontinand osteocalcin"J.Biomedical Materials Research. 68. 227-234 (2003)