研究概要 |
最終年は、抗細菌性タンパクであるディフェンシンに着目した。ヒトβディフェンシン(hBDs)は、腺上皮や扁平上皮を含む多くの臓器の上皮細胞に発現する。歯肉上皮は重層扁平上皮よりなり、これもまたhBDsを発現する。歯肉上皮は種々なる微生物に常に曝されている。現在では、hBDsは細菌感染に抵抗し、科学的バリアーの機能を持つことが知られている。hBD-1は常に上皮に発現するが、hBD-2,hBD-3は炎症性サイトカインや微生物により誘導され発現する。これら全てのhBD-1,-2,-3はグラム陽性菌、グラム陰性菌そして真菌を滅殺する広い活動性を持っている。 研究項目、経過および評価と考察 我々は(1)ヒト歯肉組織におけるhBDsのmRNAsの発現とhBD-1,-2そして-3の発現レベル。(2)αディフェンシンとhBD-1,-2,-3が角化細胞と線維芽細胞を含む白血球に影響するのか。(3)βディフェンシンがいかにして角化細胞に影響して発現を促進したり減弱するのか。(4)ヒトβディフェンシンが上皮の抗細菌性治療として活用できるのか、を検討した。その結果(1)ヒトβディフェンシン-1,-2,-3の発現レベルはお互い有意に関連していた。(2)αディフェンシンは、低い濃度で上皮細胞の増殖を促進したが、高い濃度では細胞毒性を示した。反対に、ヒトβディフェンシンは、いかなる濃度でもこれらの細胞にわずかな反応を示し、ヒトβディフェンシンは宿主に対して不利な効果はおそらくないと考えた。しかしながら、ヒトβディフェンシンに対する宿主の反応においては、臨床応用でαディフェンシンより適切な抗細菌機能があることが示唆されている。(3)ヒトβディフェンシンの発現の増加は分化指標を増加させ、ヒトβディフェンシンの抑制は、脱分化指標を増加させた。この結果は、ヒトβディフェンシンの発現は角化細胞の分化を変化させていることが示唆される。(4)ヒトβディフェンシン3発現上皮は有意な抗細菌活性を示した。
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