研究概要 |
はじめに、本研究で確立を目指す研究手法に含むべき要素、プロセスを検討した。ヘルスプロモーションの概念を、専門家を「研究者」、住民を「職員」、健康を「質の高いケア」、住民の幸せを「患者・職員の幸せ」に置き換えると、「現場職員らが、患者や職員自身の幸せのために、自分たちが提供するケアの質を保ち改善できるようにするプロセスであり、研究者は専門性を活かしてそのプロセスを支援する」こととなり、「質の高いケア」は職員自身だけでなく患者のQOLにも影響を与え、専門職の責務ともいえる点については、置き換えの際の相違点として留意する必要があるが、本研究で確立を目指す手法の概念と類似することがわかった。そのため、ソフトシステムズ方法論によるアクションリサーチ(Checkland,1990;内山,2000)、組織における知識創造理論(Nonaka,1995)に加え、ヘルスプロモーションのモデルであるThe PRECEDE-PROCEED model(Green,1991)、地域づくり型保健活動(岩永,1995)、ブレイクスルー思考による保健活動(日比野・岩永・吉田,1999)も参照した。その結果、あらゆる過程に当事者が参加すること、目標とすべき理想を共有し、それに至る条件の構造を同定した後に問題解決手法を採用すること、目標に価値・主観・暗黙知を取り入れること、主観的現実と客観的現実を突き合わせて討議することなどが重要だとわかった。 新しい研究手法の適用を試みる協力施設との共同研究体制を整えた後に、職員への面接及び質問紙調査、患者満足度調査、ケアの質指標の収集を実施した。これらの結果は、業務再構築の目標や方策を検討する際の資料とすると同時に、新しい研究手法が現場に与える影響を評価する際の基礎データとする。そのため、比較対照施設として療養病床をもつ関東の2つの病院においても同じ内容の調査を実施した。
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