経管栄養患者はその療養上の方針かち自ら味あうことなく、嚥下することなく食事を行うが、食に対する拒絶感、絶望感を抱きやすく食の満足とは遠い位置にある。そこで残存する機能を利用して少しでも通常食に近い食を提供すべく研究を行ってきた。 具体的には口腔内に用いて食事の"匂いと味"を与える食感ピースを開発した。まず遠心分離器(既存)による味覚成分、嗅覚成分の抽出をおこない、発泡グルコマンナンによる抽出物の吸着をおこなった。感覚ピースは嘆下されることなく破棄されるものであるが、口腔内に付与したときに、食品として正しく認知されるか否かの、官能性試験をおこなった。その結果によれば米飯のような主食の認知は難しく、今後の改善が必要であることが判った。パンのようなものは独特のイースト臭が認知をたすけることが明らかになった。 味覚、嗅覚を付与するものの他に、視覚に訴える目的で写真製の食事カタログを作成し、これを併用した官能性試験を行うと認知に対する結果は飛躍的に向上した。 これらを試行する場として健常者を経管栄養患者に見立てた上で、経管栄養患者のための食事会のシュミレーションを実行した。その結果、口腔内にいれたものを、再び取り出す際に羞恥があること、口を漱ぎたい欲求があることなどが明らかになった。また技術的問題点として味覚を元にもどすためと、唾液を吸収するための"口ぬぐいピース"を開発する必要性が明らかになった。
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