本年度は前年度までの成果をうけながら、次世代のユビキタスコンピューティング環境向けの分散処理技術を研究・開発した。ユビキタスコンピューティング環境を構成するコンピュータの特徴かつ問題は計算リソースに制限が多いことである。例えば大画面テレビにコンピュータが埋め込まれていても、キーボードを持つとは限らない。逆に携帯電話やPDAなどはボタンやポイティング装置を持っていてもその画面は小さい。本研究ではこれらの相違なコンピュータを組み合わせることで、個々のコンピュータの計算リソース制限を超えた情報サービスを実現する方法を実現する。今年度はその中でも、アプリケーションソフトウェアを移動可能コンポーネントへの分割・再構成方法を実現した。これはアプリケーションが複数コンポーネントから構成するとともに、各コンポーネントはその要求する計算資源に応じて分散システム上の複数コンピュータ上に動的配置するものである。また、その再配置手法としてコンポーネントの移動性、通信回数による結合強度、通信遅延、ユーザの入出力の有無などを基準に組織化するアルゴリズムを提案した。また、コンポーネントを投機的に移動させる方法も導入し、これらは前年度及び本年度に整備されたクラスターコンピュータ上で動作・実験を行った。また、最適配置の基礎となる空間モデルを提案した。これはユーザやコンピュータの位置や計算リソースなどを統一的に扱えるものであり、その空間モデルを通じて位置やユーザ依存サービスが提供できることを確かめた。
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