昨年度、手元に臨場感の高い立体映像を提示する多視点裸眼立体ディスプレイの1号機として、16台のプロジェクタとフライアイレンズ、フレネルレンズを組み合わせて、空間像を利用した16視点裸眼立体ディスプレイを構築した。しかし、このシステムは視点数が少ないため十分な視野角が維持できないこと、さらに、多数のプロジェクタを用いるためプロジェクタの色あわせが難しく、異なる視点の映像間で色の違いによる違和感が発生するなどの欠点があった。 これらの問題点を解決するために、本年度は高精細液晶モニタと凸レンズアレイを組み合わせ、多数のプロジェクタを並べるのと同様の光学系を作り上げ、それをプロジェクタアレイの代わりに用いるシステムを構築した。これにより、54視点化が達成され、視野角の拡大が実現されるとともに、異なる視点間の色の違いが無くなり、滑らかな立体像の提示が可能となった。完成したシステムは、CEATEC JAPANにも出展し、一般参加者の多くから非常に高い評価を得ることができた。 また、立体映像鑑賞時に目の疲労の原因となる輻輳調節矛盾の低減については、昨年提案したシリンダーレンズと高周波パターンを組み合わせる方式を、CGだけでなく自然画にも応用できる方法を提案した。自然画の場合、もともとの画像に高周波成分が含まれており、自在に高周波パターンを重畳することはできない。そこで、特定の方向の高周波パターンのみを強調し、他の高周波パターンを抑制するフィルタを適用するアルゴリズムを実装した。この方式が輻輳調節矛盾の低減にどれだけの効果があるかを今後計測する予定である。 さらに、輻輳調節矛盾を低減する新たな試みとして、色情報を二眼式で、エッジ情報をボリューム方式で組み合わせて提示する方法を提案した。簡単な生理実験により、この方式の有効性を確認することに成功した。
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