昨年度までに、多視点高解像度立体ディスプレイの基本は完成したが、今年度は、画質の向上、視野角の拡大、輻輳調節矛盾の解消による目の疲労の低減の3点について、改善を試みた。 まず、画質の向上については、昨年度までのシステムで使っていたフライアイレンズを使わないシステムの構築を試みた。この場合、頭を動かしたとき、画像が不連続に切り替わるような違和感が生じていたが、それを取り除くためのレンズ光学系を設計した。この設計で、不連続感が低減されるとともに、視野角の拡大も同時に解決された。ただし、このレンズ光学系だけで、完全に不連続感が取り除かれるわけではない。この不連続感を取り除く方法として、多層にわたる弱拡散を行う方法を試み、一定の効果を上げた。この方法は、同時に輻輳調節矛盾による目の疲労を緩和する効果も確認された。 輻輳調節矛盾の解決方法としては、昨年度まで行っていたシリンダーレンズと高周波縞状パターンの組み合わせ方法について、より詳細な解析を行い、その理論はほぼ完成された。ただし、この方法は上述の多視点方式に組み合わせることは難しい。そこで、多視点方式に組み合わせが可能な方法として、多視点立体ディスプレイとボリュームエッジを組み合わせる方法を昨年度提案したが、今年度はその実装を行った。アグティブなエッジ提示方法としてはモノクロ液晶パネルを多層に重ねる方法を試み、一定の成果をあげた。また、より廉価な方法として、メッシュテクスチャを多層にばらまく方法を新たに提案し、レフラクトメータを使った目の測定実験で、この方法でも輻輳調節矛盾の解消が期待できることが確かめらた。 この3年間の研究成果により、提案する多視点立体ディスプレイは商品化できるレベルのシステムを達成したということができよう。
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