研究概要 |
現在までに、ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体α(PPARα)リガンド摂取によるビタミンE濃度の低下が、酸化ストレス亢進によって起こっているのではなく、ビタミンE代謝の促進によって起こる可能性を示した。平成17年度は、ビタミンE代謝産物の排泄量を調べることによって、PPARα活性化によるビタミンE代謝促進の可能性をさらに追求した。 1 カルボキシエチルヒドロキシクロマン(CEHC)排泄量に及ぼすPPARαリガンド摂取の影響 3週齢のWistarラット(雄性)にビタミンE無添加飼料を4週間摂取させて、ビタミンE欠乏ラットを作製した。このビタミンE欠乏ラットに、α-トコフェロール(α-T)添加飼料、α-TおよびWY14,643添加飼料、またはα-Tおよびクロフィブレート添加飼料を3日間摂取させた。屠殺前12時間のα-CEHC排泄量は、3群間に有意な差は観察されなかった。したがって、PPARαの活性化によってα-Tからα-CEHCへの代謝が促進される可能性は低いと考えられた。 2 種々の遺伝子発現に対するビタミンE摂取の影響 6週齢のWistarラット(雄性)にビタミンE無添加飼料を4週間摂取させて、ビタミンE欠乏ラットを作製した。このビタミンE欠乏ラットに、ビタミンE同族体として、(α-T、γ-トコフェロール(γ-T)、またはトコトリエノール(主にα-トコトリエノールとγ-トコトリエノールを含む,T3)を胃内に強制投与し、24時間後に屠殺した。ビタミンE代謝に関与すると予想されるシトクロームP450(CYP)3A3、3A11、3A13、3A18、脂質や薬物の主要なトランスポーターであるABCA1、B1、C1、およびα-トコフェロール輸送タンパク質の肝臓中のmRNAレベルを測定したが、いずれもビタミンE同族体の摂取による有意な変動は観察されなかった。一方、CYP3Aの基質として知られるケトコナゾールを投与した場合には、CYP3A、3A13、3A18の肝臓中のmRNAレベルの上昇が認められた。したがって、今回の結果から、ビタミンE代謝に対するCYP3Aの関与を明らかにすることはできなかった。
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