研究概要 |
平成15年4月、5月、9月に独立行政法人水産総合研究センター東北区水産研究所の若鷹丸に乗船し、北西太平洋亜寒帯域における植物プランクトン群集の比死亡速度および死亡率を、それぞれ、エステラーゼ活性法および細胞消化法により見積もることを世界で初めて試みた。また、これらデータの対比として、^<13>C法による基礎生産力の測定やアクティブ蛍光法による光合成活性(光化学系IIパラメータ)の測定等を行った。 植物プランクトンの春季ブルームが発生する直前およびブルーム初期の4月では、植物プランクトンが死亡した際に海水中に放出する、エステラーゼの濃度は相対的に低く(一般に、<20nMフルオレセイン当量)、植物プランクトンの比死亡速度も低かった(<0.2d^<-1>)。また、同時期の植物プランクトンの光合成活性は非常に高かった(F_v/F_m=0.48±0.04,n=1166)。一方、9月では、海水中のエステラーゼ濃度が相対的に高く(20-40nMフルオレセイン当量)、比死亡速度も0.20-0.43d^<-1>の範囲にあった。過去に北太平洋における植物プランクトンの細胞死に関する報告はないが、今回得られた9月の高い比死亡速度は、今までに報告されている動物プランクトンによる植物プランクトンの補食速度とほぼ同じ程度であることがわかった。また、9月の植物プランクトン群集で優占していた体長約5〓m以下の植物プランクトンに関して死亡率を調べたところ、ラン藻Synechococcus spp.の死亡率は20-30%であったのに対し、真核植物プランクトンの死亡率は60-70%と非常に高かった。今後、北西太平洋亜寒帯域の植物プランクトンの死亡原因を調べ、物質循環過程とのかかわりを明らかにする予定である。
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