対象とする燃焼排ガス中水銀濃度は現在では、数〜数十μg/m3Nと低濃度である。このような低濃度の場合、安定的に水銀濃度を実験装置に供給することは難しい。したがって、低濃度水銀を安定的に発生させる装置を製作する必要がある。本研究では、まず、水銀ガスの吸着実験を行うための実験装置、特に低濃度水銀ガス発生装置の製作を目的とした。吸着実験装置としては、パイレックス製の反応容器を恒温槽中に設置およびこの反応容器の入口および出口の水銀ガスを測定するため、連続水銀測定装置を組み合わせた吸着実験装置を製作した。次に、低濃度の水銀ガス発生装置としては、金属水銀(液体)をシリコンチューブ内に入れ、54℃に保つことにより150ng/minの速度で安定的に金属水銀を安定的に発生させることができた。 次に、この装置を用いて活性炭への吸着実験を行い、金属水銀を吸着させた活性炭サンプルを作成した。活性炭上での水銀の吸着状態を解析するため、作成したサンプルを大型放射光施設SPring-8内のビームラインBL01B1においてX線吸収微細構造分析(XAFS)を行った。サンプル中の水銀が微量であるため、19素子Ge半導体検出器を用いて蛍光法により測定した。その結果、金属水銀は活性炭に物理的に吸着しているのではなく、化学的吸着していることがXANESスペクトルから明らかとなった。何も処理を施していない市販の活性炭を用いた場合、そのスペクトルはHgSに類似しており、微量に含まれる硫黄あるいは硫黄を含む官能基により捕捉されていることが示唆され、活性炭上での水銀の吸着状態に関する基礎的な重要な知見が得られた。
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