本研究では、燃焼排ガス中に含まれる水銀、特に金属水銀ガスを除去することを目的とした吸着剤を開発するための基礎的知見を得るものである。 まず、本研究で昨年度作成した低濃度水銀ガス吸着試験装置を用いて、活性炭への水銀吸着実験を行った。吸着された水銀の活性炭上での状態を調査するため、作成したサンプルを大型放射光施設SPring-8内のビームラインBLOlBlにおいてX線吸収微細構造分析(XAFS)を行った。活性炭を硝酸処理により酸素含有官能基を発現させた場合、明らかに前処理なしの活性炭とは吸着状態が異なり、酸化されて活性炭に吸着されていることがわかった。つまり官能基との反応を介して、活性炭上に吸着されることがわかった。CuCl_2の添加により、160℃でも極めて高い水銀除去能を有する活性炭を作成することが可能であった。この活性炭上ではXANESの吸収端位置からは一価であると推測された。ただし、CuCl_2はダイオキシン類合成の最も強い触媒と考えられ、この物質を実際に使うには温度管理を極めて厳格に行う必要がある。 水銀の吸着には燃焼排ガス中の水銀種が大きな影響を及ぼすといわれている。本年度は、昨年度購入した水銀の連続分析計を用いて、スウェーデンに有害廃棄物焼却炉における排ガス中の形態別水銀(Hg^0とHg^<2+>)の濃度の測定および、排ガス中の水銀挙動解明のための実験を行った。バグフィルタを通過した後の水銀の形態は、同場所での硫黄酸化物や塩化水素濃度に影響されているわけではなく、バグフィルタ前の硫黄酸化物濃度、塩化水素濃度に影響されていることが明らかにされた。バグフィルタ後ではHg^0とHg^<2+>の割合は平均すると1:1程度であることがわかり、さらに高度処理(吸着処理)をする際の知見が得られた。
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