研究概要 |
電子線照射によって薄膜表面上の任意の領域に形成できるナノメーターサイズのくぼみ(表面ナノホール、直径数nm、深さ数10nm)の集合を核形成のための鋳型(テンプレート)とし、位置制御された表面・界面ナノ構造の形成を試みた。 表面ナノホールが存在する表面上における吸着原子の表面拡散・集合機構を解明した。具体的には、さまざまな深さをもつ表面ナノホール(電子線の照射量に依存)が存在するシリコン表面上に金原子を蒸着し、熱処理して金微粒子を形成したのちその空間分布と個々のサイズを調べた。解析の結果、電子線照射量の関数として、電子線照射表面上における吸着金原子の拡散係数および吸着係数が見積もられた。照射量に依存する拡散係数および吸着係数の兼ね合いにより、電子線照射量に依存して金微粒子が形成される場合とされない場合があることが分かった。その結果、電子線量を調節し適当な深さのナノホールが存在する表面を作成すると、その表面上に選択的に金集合体を形成できることが分かった(Torigoe, Ohno et al.,投稿準備中)。金以外の金属(ガリウムなど)や半導体(ゲルマニウムなど)で同様な実験を行い、表面上の任意の位置へのナノ構造作成(たとえば周期配列させた表面ナノ構造の作製など)を試みる予定である。 薄膜成長時に基板の表面構造を制御すると、基板と薄膜の界面を起点にある種のナノ構造(界面ナノ構造)が形成されることが分かった(Ohno et al.,Appl.Phys.Lett.83,54(2003))。表面にナノホールの存在するシリコンを薄膜成長の基板に用いることで、界面ナイ構造の形成の有無を調べる予定である。
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