本年度は、装置の設計から立ち上げまでの作業、回折パターン測定プログラムの開発、構造解析法の改良を行った。 装置の設計にあたっては、目的の表面を迅速に作成し、正確かつ迅速にその構造解析を行うことができるように以下の点に留意した。(1)5x10^<-11> Torr以下の高い真空度。(2)低速電子回折パターンを観察しながら蒸着可能。(3)オージェ電子分光による表面組成の測定。(4)通電加熱方式による真空度劣化のない温度制御。(5)液体ヘリウムを用いた20K以下の冷却。(6)液体窒素トラップを用いた低速電子回折装置及びシャッターの冷却による残留ガスの低減。現在までに装置の立ち上げがほぼ完了し、上記の性能を達成することができた。 低速電子回折パターンの測定においては、フレームブラバボードとDA変換ボードをコンピュータ制御するコードを作成し、リアルタイム画像計測と電子エネルギー制御の高速自動化が可能となった。これにより、電子線入射角度調節のための迅速測定と表面構造解析用の高精度画像測定の両方をすばやく行うことが出来るようになった。 構造解析法においては、これまで扱うことの出来なかった映進対称性を取り入れることが出来るように改良を行うと共に、きめ細かく原子位置の自由度を設定できるようにすることで、大きな単位格子の表面構造にも対応できるようにした。また、ドイツのHeinz教授の許可を得て、彼らが開発した直接法のプログラムを使うことができるようになった。
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