研究概要 |
申請者はZn^<2+>選択的蛍光センサー分子ZhAF-2の開発に成功した.ZnAF-2は生理的な重要性が報告されている.Zn^<2+>の動態,作用機序を解明する手段として生細胞,組織などに応用されている.特に既存の亜鉛蛍光センサー分子の問題点であったZn^<2+>に対する選択性を.ZnAF-2は克服しており,Ca^<2+>やMg^<2+>など他の生理的に重要なイオンには影響を受けない.またZn^<2+>に対するみかけの解離定数(K_d)はnMオーダーであり,低濃度、(0.1nM〜10nM)のZn^<2+>の濃度変化を検出することができる.しかし,研究を進めるうちに中枢神経系ではμMオーダーまで濃度が達する可能性に気が付いた.その範囲では蛍光強度が飽和するため,all or noneの定性的な評価はできるが,正確な濃度を求めることはできない.より広い範囲でのZn^<2+>の濃度範囲を測定可能にするためにはセンサー分子を低親和性にする,つまりK_d値を大きくする必要がある.この場合重要な点として,親和性を変化させてもZn^<2+>以外のイオンへの特異性は維持しなくてはいけないことが挙げられる.低親和性亜鉛蛍光プローブの候補を,ZnAF-2の構造を基本骨格としてデザイン・合成した.具体的にはピリジン環の6位にメチル基を組み込み立体障害を導入したもの(ZnAF-2M),配位数を減らしたもの(ZnAF-3),配位子間の距離を伸ばしたもの(ZnAF-4、ZnAF-5)である.いずれのプローブもZn^<2+>に対する選択性が高く、膜透過型の合成を行うことで生細胞や組織への応用も可能となり,これらのセンサー分子を用いてnMからμMに至るまで広い濃度範囲でZn^<2+>濃度変化をイメージングすることに成功した.
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