研究課題
平成17年度は、北アジアにおける後期旧石器文化の出現過程を解明するため、ロシア連邦イルクーツク国立大学歴史学部考古学研究室と共同調査を実施した。調査は、イルクーツク市北方約170kmに位置するブラーツク貯水池域に面するバリショイ・ナリン遺跡群において7月12日から8月29日まで実施した。昨年度は沢を挟んだバリショイ・ナリン2遺跡に発掘区を設定し、古土壌層から石器群と上部更新世のウマを主体とする動物遺存体を検出したが、平成17年度は、沢を挟み東側に位置する浸食面であるバリショイ・ナリン1遺跡に発掘区を設定し考古学的および地質学的調査を実施した。調査には、北海道大学とイルクーツク国立大学のほか、調査協力者としてハンズヒーノヴァ博士(ロシア科学アカデミーシベリア支部)、吉田邦夫氏(東京大学総合研究博物館)、佐藤孝雄氏(慶応大学文学部)の調査協力と参加を得た。調査の結果、石器と動物遺存体を包含するOIS3段階の古土壌層をいくつかのレベルで確認し、年代測定用のサンプルと土壌分析サンプルを採取した。現段階で報告を受けた段階では石器群を包含していた古土壌層の年代は、上層が28000-27000年前、下層が30000-31000年前という報告を受けている。すでにこれまでの調査において蓄積された資料と比較して後期旧石器時代初頭の石器群を調査によって確認できたと見ることができる。また平成17年度は、本研究計画の最終年度であることから野外調査終了後の8月30日から9月12日までイルクーツク大学歴史学部において、これまでの3カ年の出土資料の整理と分析を行った。貯水池岸辺での採集資料は4000点を超え、発掘区出土の500点あまりの資料と総合的に比較検討することから、バイカルシベリア地域の中期旧石器段階から後期旧石器段階への以降の様相についての考察を進めている。また広く北アジア地域における気候変動と人類文化の変遷との相関性についての考察を周辺資料および本調査によって得られた資料とを総合させることによって行っている。これら調査成果の詳細および考察については、別途報告書を作成中であり、刊行により広く成果を公開する予定である。
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Journal of the Graduate School or Letters, Hokkaido University Vol.1
ページ: 3-16