研究概要 |
本年の研究活動の成果として,(1)組織の衰退・滅亡のプロセスに大きな影響を持つと思われる,組織内パワー構造と組織戦略の変化に関する実証研究,(2)ベンチャー企業組織のパフォーマンスに対して直接的な影響を持つと思われる,トップマネジメント構造に関する実証研究,(3)組織の学習,および,市場構造が持つ組織の競争優位性に関する実証研究の3つを挙げる。 第1の研究では,組織内パワー構造が,環境への適応,不適応の源泉となり,組織衰退の根本的な原因となりうるという考えを受け,どのように組織内パワー構造が戦略的変化に影響を及ぼしているのかを,日本の造船・メカトロニクス産業19社のパネル・データ分析を通じて調査を行った。その結果,組織の横方向のパワー固定化は戦略的変化を停滞させる一方で,縦方向のパワー格差は変化を増長させる影響を持つことが明らかになった。この研究成果は,アメリカ経営学会,経営行動科学学会で発表されただけでなく,組織戦略論の国際的に認められているStrategic Organization誌に掲載されることが決定している。 第2の研究では,米国インターネット企業約500社のパネル・データを用い,どのようにベンチャー企業の企業内構造が組織の成長と関係があるのかを,一部,コーネル大学サイン助教授,メリーランド大学カーシュ助教授と共同で行った。この研究では,いわゆるトップの重厚さをあらわす管理比率,トップマネージャーの専門性,及び,創業者の退任が,どのように企業の設立初期の成長に関係しているのかを,極めて珍しいデータを用いて検証した。この研究成果は,2003年夏のアメリカ経営学会で発表され,現在論文投稿中である。 第3の研究では,1988年〜2003年のホテル年鑑データ,および実地ヒアリング・データを用い,東京23区内に立地するホテルの競争優位性に関する実証研究を行った。この研究では、特に,組織の学習・経験構造,そして,密度や複数市場コンタクト理論を用いて,組織内,組織外の2つの大きな力がどのように組織の成長,衰退に関係しているかを明らかにした。この研究成果は,2004年アメリカ経営学会で発表が予定され,また現在論文投稿中である。
|