研究概要 |
本研究では,組織が衰退・滅亡する過程とそのパターンについて,2つの大きな枠組みを想定して研究を行っている。まず第1に,組織の外的な要因,すなわち経営環境がもたらす競争的緊張や脅威,新しいテクノロジーの出現に伴う適応の問題が挙げられる。2つ目の枠組みとは,組織内部の要因であり,具体的には,組織構造,情報処理能力,パワー関係,そして,組織学習などの要因が考えられる。本研究では,衰退・滅亡にいたる過程の中で,必ず組織は外的な要因による脅威と,内的な要因による制約を受けており,この2つのフォースのインターアクションが,パターンを形作っているのではないかと考えている。特に現在想定しているモデルは,path dependent(経路依存性の高い)パターンと,path-independent(経路依存性の低い)パターンがあり,環境の不確実性が高い時には,path-independentパターンの進化を遂げられる組織の方がより生存率に対して有利に働くと考えている。例えば,私がGreveと発表した組織内パワーに関する論文では,部門間のパワーや組織内のパワー格差が固定化され,path-independentのレベルが高くなることによって,組織はより変革を行いにくく,特に,その影響は組織のパフォーマンスが低迷しているときに強くなることが明らかになっている。また,現在審査中のSineとKirschと執筆している論文では,ベンチャー組織内の官僚的ともいえる組織制度が,むしろ組織内に安定を生み出し,path-dependentな進化を可能にすることから,好業績につながることも明らかになっている。現在までの研究では,この2つのパターンがどのように生み出され,そして,組織のパフォーマンスに対してどのような影響を持っているのかが不明であり,引き続き,これらを明らかにしていく予定である。
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