Rbの冷却原子集団と単一光子との間に軌道角運動量に関するエンタングルメントを生成することに成功した。ハイパーファインポンピングされた原子集団にC数とみなせるような光を照射するとAnti-stokes Raman過程がおこる。この際、ある特定の空間モードに射出された単一の光子を検出すると、原子のディッケ状態を1つ励起することができる。原子系のデコヒーレンス時間内であれば、Stokes Raman過程を誘起するような光を照射することで、好きな時刻に単一光子を取り出すことが可能となる。このようにして発生した単一光子が、実は原子集団との間に軌道角運動量のエンタングルメントをもつことを我々は確かめた。Dislocationをもつホログラムとシングルモードファイバーとの組み合わせを利用して、軌道角運動量に関する量子トモグラフィーを行い、再構成された密度行列要素から、エンタングルメントの指標である Entanglement of formation(EOF)を評価した。その結果、0.6という値を得た(EOF>0の場合、エンタングルメントが存在する)。今回の実験は、軌道角運動量状態を2次元に限定して行ったが、系が本質的に多次元の性質をもっていると推定することはごく自然である。量子情報が原子集団の空間的な位相分布にマッピングされるため、非共鳴のレーザーを絞って原子集団に照射することで、エンタングルメントコンセントレーションを行うことも可能となるだろう。さらに、対応する原子集団を凝縮体にかえることで、イラスト状態の励起など物性面に関する研究を行うことも可能となる。
|