研究課題
本研究は放射光X線を用いたX線回折測定により、地球深部物質の相転移を明らかにすることを目的としている。われわれは下部マントルを代表する鉱物MgSiO3ペロブスカイト相が125万気圧・2500K以上において、ポストペロブスカイト相へ一次の構造転移を起こすことを世界ではじめて発見し、今年度はじめにScience誌の表紙を飾った。さらにわれわれは実験で得られた構造を基に第一原理電子状態計算を行い、絶対零度における安定性を理論的にも確認するとともに、その弾性定数を求めた。その結果、D"層と呼ばれるマントル最下部において観測される、D"不連続、横波の偏向異方性、バルク音速と横波速度の逆相関といった大きな地震波速度異常を、あたらしく発見されたポストペロブスカイト相によって説明できることがわかった。この結果はNature誌に発表した。これらの成果は高圧鉱物物理学における極めて重要な発見であり、50年以上にわたって地球内部の最大の謎とされてきたD"層の実体を解明するものとして大きな注目を浴びた。今年度はさらに天然のパイロライト的マントル組成、および中央海嶺玄武岩組成につき、同様にポストペロブスカイト相への相転移を確認すべく、レーザー加熱式ダイヤモンドアンビルセルを用いた高圧高温実験を行った。その結果、双方のバルク組成において、深さ約2500kmにおいてポストペロブスカイト相転移が起こることがわかった。また透過型分析電子顕微鏡を用いた化学分析により、ポストペロブスカイト相に鉄が分配されにくいこと、逆に多くナトリウムが含まれること、などがあたらたに明らかになった。
すべて 2005 2004
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