研究概要 |
本研究では,クーロン爆発によって生成した多価原子イオンと電離電子の運動量分布を同時計測し,イオンおよび電子の持つ運動量ベクトルの相関にもとづいて強光子場中分子ダイナミクスを明らかにすることを目的とする.本年度はこの目的のためにコインシデンス運動量画測定像システムの設計と製作及びその性能評価を行った.このシステムにおいては,2台の位置敏感型粒子検出器を対向させて設置し,電場と磁場を組み合わせることによって,分子から生成した,ほぼすべてのイオンおよび電子を捕集し,検出器に到達した際の時刻・位置を高分解能で決定できる.検出器を設置する真空チャンバー内は残留気体からの擬コインシデンス信号を最小限にとどめるために,ターボ分子ポンプおよびオイルフリースクロールポンプを用いてチャンバー内真空度を10^<-10>Torr以下に保たれている.また,高い運動量分解能を得るために試料ガスはターボ分子ポンプで差動排気されたチャンバーから超音速分子線として導入できる. このコインシデンス運動量画像測定システム,新たに導入した高強度超短パルスレーザー光(2mJ,1kHz,50fs)を集光して得られた強光子場(〜10^<14>W/cm^2)におけるCS_2およびアセトニトリル(CH_3CN)から生成したフラグメントイオンのコインシデンス計測を行い,単一親分子イオン検出条件下でイオンコインシデンス測定が可能であることを示した.特に,CS_2分子においては,強光子場において生成した光ドレスト状態ポテンシャルの形状を反映して,2つのC-S結合が同時に伸長することを初めて明らかにした.
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