電荷移動型ナノドメインの設計

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15685008
• 研究機関: 北海道大学
• 研究代表者: 芥川 智行 北海道大学, 電子科学研究所, 助教授 (60271631)
• キーワード: 電荷移動相互作用 / 分子性導体 / ナノドット / ナノリング / 原子間力顕微鏡 / ナノワイヤ / TTF / マクロサイクル

研究概要

本研究では、有機分子の作る分子集合体に着目して、そのサイズ・形状・電子機能の設計を、超分子化学のアプローチを分子性導体に導入する事で試みる。最終的な研究目的として、1分子集合体のサイズ・形状の制御および2ナノ分子集合体の電子状態制御の2点が挙げられる。
15年度は、特異な分子集合体ナノ構造を出現させる分子構造の提出を、両親媒性マクロサイクリックTTF分子および両親媒性ピロロTTF誘導体の合成の観点から試みた。その結果、前者においては、エチレンジオキシ、カルボメトキシ、エチレンジチオロ誘導体を新規に合成し、その電荷移動型ナノドメインの作製に関する研究を試みた。その結果、ナノワイヤに加えて、ナノドット、ナノドットアレー、ナノドットリング構造などの多彩な分子集合体ナノ構造を基板上に構築する手法を開発した。また、ナノドット構造に関しては、スピナーの回転数制御を利用した簡便な手法でそのサイズ制御が可能である事を実証した。ピロロTTF誘導体から作製されるLBに関しては、電荷移動錯体を形成させるアクセプター分子を電子親和力の観点から多岐にわたって検討を行い、中性からイオン性に至る電荷移動型超薄膜の作製を行い、原子間力顕微鏡を用いた膜の表面構造の観測とIR-RASおよび電子スペクトルを用いた膜の電子状態に関する評価を行った。その結果、分子系の設計次第で完全イオン性から中性までの電子状態をLB膜状態においても設計可能である事が示された。また、16年度以降に実施予定の、ナノ構造の電気伝導度測定を行うために、新規に導入した原子間力顕微鏡において探針を電極として用いる伝導度測定装置の構築に取り組んだ。

研究成果

• [文献書誌] T.Akutagawa et al.: "Magnetic Properties of [Ni(dmit)_2] Anions Induced by Flexible Hydrogen-bonded Supramolecular Cations (p-Xylylenediammonium^<2+>)(Crown Ethers)_2"J.Phys.Chem.B.. 107. 66-74 (2003)
• [文献書誌] T.Akutagawa et al.: "Hydrogen-bond from [O-H・・・N-N・・・H-O] to [O^-・・・+H-N-N-H+・・・^-O] Structures in Solid"J.Phys.Chem.B.. 107. 6248-6251 (2003)
• [文献書誌] Y.Tatewaki et al.: "Structural modification of molecular nanowires composed of dialkylmacrocyclicbis TTF-F_4TCNQ complex"Synthetic Metals. 137. 933-934 (2003)
• [文献書誌] H.Miyata et al.: "Langmuir-Blodgett films of bis-tetrathiafulvalene substituted macrocycle and TCNQ derivatives"Thin Solid Films. 438-439. 1-6 (2003)
• [文献書誌] T.Akutagawa et al.: "Langmuir-Blodgett Films of Charge-Transfer Complexes Between an Amphiphilic MonoPyrrolo-TTF and TCNQ Derivatives"J.Phys.Chem.B.. 107. 13929-13938 (2003)
• [文献書誌] T.Akutagawa et al.: "Proton-Transfer and Dielectric Phase Transition in Molecular Conductor (HDABCO^+)_2(TCNQ)_3"J.Am.Chem.Soc. 126. 291-294 (2004)