遺伝子組換え大腸菌により生合成した分子量300万以上の超高分子量ポリ[(R)-3-ヒドロキシブチレート](P(3HB))を用いて高強度繊維を作製し、繊維中の分子鎖構造を大型放射光のマイクロビーム回折により詳細に解析した。非晶質繊維の冷延伸・二段階延伸法により作製された直径40ミクロンの単繊維に、フレーネルゾーンプレートを用いて0.5ミクロンにまで収束した放射光を、繊維方向に対して垂直に2ミクロンの間隔で照射した。その結果、繊維の外側にはα構造と呼ばれる2回らせん構造を有する結晶が、繊維の中心部分にはα構造に加え、β構造と呼ばれる平面ジグザグ構造を有する結晶の2種類が存在することが分かった。すなわち、高強度繊維は、2種類の分子鎖構造を持ち、それらが局在する、芯鞘構造であることが分かった。 さらに、野生の微生物が生合成する分子量数十万のP(3HB)からでも高強度繊維を作製する技術の開発を行った。その結果、次のような手法により高強度繊維が作製できることを見いだした。1)180℃で溶融押出した後、氷水中で巻き取ることにより非晶質繊維を作製する。2)氷水中で一定時間、等温結晶化を施す。3)等温結晶化後、室温にて延伸器により所定倍率まで延伸し、熱処理を施す。この方法により、破壊強度700MPaを有する繊維の作製に成功し、汎用高分子並みの強度を得ることが出来た。この繊維中にもα構造とβ構造の両方が存在することが、X線回折により分かった。
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