チャージトランスファー状態からの発光を利用した次世代シンチレータ単結晶材料の開発

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15686001
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 吉川 彰 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教授 (50292264)
• キーワード: 単結晶 / シンチレータ / 融液成長 / チャージトランスファー / 医療工学 / TOF検出器

研究概要

本研究では、医療用PET装置などに用いられているシンチレータの新たな候補物質として、Yb^<3+>のチヤージトランスファー(CT)状態からの発光について検討した。Yb^<3+>イオンのシンチレーションはparity許容であることから遷移が早く、ホストにより特性が大きく異なることから、本研究では様々なホスト中での発光特性について研究を行った。本年度は、Lu_3Al_5O_<12>、Gd_3Ga_5O_<12>、Lu_3Ga_5O_<12>などのガーネット結晶、YAlO3などペロブスカイト結晶を中心に、アパタイト結晶、ボレート結晶などの結晶系にYbイオンをドープし、シンチレーシヨン特性を評価した。その結果、CTからの発光は蛍光寿命が非常に早く、室温では、Yb:YAPにおいて0.6nsと、現在用いられているCe:LSOの40ns、BGOの300nsなどと比較して大きく上回ることが分かった。また、温度消光効果により、温度によって発光量および蛍光寿命が大きく変動し、室温では発光強度が低いものの寿命が非常に早く、低温では発光量・蛍光寿命ともに従来材料に匹敵する、あるいは上回る値を示した。蛍光寿命が温度により制御可能であることは従来のシンチレータには見られない特徴である。また、Ceをドープした結晶と異なり、結晶中にGa^<3+>イオンが存在しても発光すること、置換サイトの元素のイオン半径とYb^<3+>のイオン半径の差が大きくなるにつれて発光ピークがブロードになること、結晶の格子定数により発光ピークがシフトするなど、発光原理にかかわるいくつかの挙動も明らかとなった。次世代のTOF型PETでは、1nsを切る蛍光寿命をもつシンチレータ材料、DOI型PETではわずかに寿命の異なる2種類のシンチレータ材料が必要とされており、今回の結果は、Yb系シンチレータがこれらのPFT用シンチレータとして適していることを示している。

研究成果

• [文献書誌] A.Yoshikawa: "Crystal growth of Yb^<3+>-doped oxide single crystals for scintillator application"Journal of Crystal Growth. 250. 94-99 (2003)
• [文献書誌] H.Ogino: "Growth and scintillation properties of Yb-doped Lu_3Al_5O_<12> crystal"Journal of Crystal Growth. 253. 314-318 (2003)
• [文献書誌] J.B.Shim: "Growth and characterization of Yb ^<3+>-doped YAlO_3 fiber single crystals grown by the modified micro-pulling-down method"Journal of Crystal Growth. 256. 298-304 (2003)
• [文献書誌] A.Yoshikawa: "Growth and optical properties of Yb doped new scintillator crystals"Optical Materials. 24. 275-279 (2003)
• [文献書誌] A.Yoshikawa: "Growth and spectroscopic analysis of Yb^<3+>-doped Y_3Al_5O_<12> fiber single crystals"Journal of Applied Physics. 94. 5479-5488 (2003)
• [文献書誌] M.Nikl: "Very fast Yb_xY_<1-x>AlO_3 single-crystal scintillators"Applied Physics Letters. 84. 6 (2003)
• [文献書誌] J.B.Shim: "The growth and charge transfer luminescence of Yb^<3+>-doped YAlO_3 single crystals"Journal of Applied Physics. 95. 3063-3068 (2004)