本研究課題では、従来欠けていた直接観察情報である酸化雰囲気応力負荷条件下での酸化反応過程および局所応力・ひずみ分布と微小き裂発生・成長挙動を、小型パンチ(SP)試験中にレーザーラマン分光光度計と高感度CCD検出器によりその場解析し、『Ni基超合金の応力加速粒界酸化(SAGBO)割れ』と『リサイクル鋼のCu起因熱間表面割れ』の表面割れの微視的機構の解明と新しい割れ感受性評価法の開発を行うとともに、メカノケミカル支配型からケモメカニカル支配型へとひずみ速度に依存して連続的に遷移する環境強度劣化現象の統一評価基盤技術システムの確立を最終的なゴールとしている。平成15年度に得られた研究成果は次のとおりである。 1.SPクリープ試験あるいは種々の変位速度下の高温SP試験を実施しながら、高感度CCD検出器による酸化誘起表面割れ発生・成長挙動のその場観察と顕微レーザーラマン分光器による高温酸化反応過程および局所応力・ひずみのその場解析が可能な『高温環境強度その場計測SPシステム』を設計・試作した。本試験システムにより、最高温度:1300℃、最大荷重:500kN、変位速度:0.0001〜10mm/min、種々の雰囲気(大気、真空、不活性ガス)中における小型平板試験片を用いた高温強度特性試験を行うことが可能となった。 2.動作確認を目的として、試作したSP試験システムを用い、"約10万時間使用後に廃却されたCr-Mo-V鋳鋼製主要弁"と"新たに開発された耐熱材料である12%Crロータ鋼"の靭性およびクリープ特性を調査した。その結果、長期間使用あるいは長時間時効に伴う両鋼の経年的材質劣化を評価することができた。
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