上記課題における当初の研究計画は、大気圧プラズマプロセスであるプラズマCVMを適用することにより、振動周波数の温度特性に優れたATカット水晶素板を厚さ3μm以下(固有振動数600MHz以上)、平行度3nm以下に仕上げるプロセスを確立することであった。具体的には研究期間内において、(1)水晶素板の加工特性(加工速度、表面粗さ)と加工パラメータ(反応ガス種、反応ガス濃度、電力等)の相関を得る。(2)数値制御加工により水晶素板の平行度を向上させる。(3)作製した水晶薄板の形状精度(厚さ、平行度)と固有振動特性を評価することを目標とした。 本計画に対し、項目(1)に関しては初年度において既存の円筒型回転電極を有する加工装置を用いて基礎的な加工特性の取得を行い、表面粗さを悪化させずに加工速度を増大することが可能な反応ガス組成(CF_4とO_2の組成比)を見出した。また、2年目には項目(2)を達成するため、円筒型回転電極とパイプ電極を併用することにより平行度を向上させる2ステップ修正プロセスを考案し、パイプ電極ユニットの試作、およびNC走査が可能なパソコン制御によるXYテーブルを設計・製作した。本プロセスにおいては、円筒型回転電極を用いて1次元の数値制御走査を行うことにより、厚み誤差の長空間波長成分を高能率に除去し、さらにパイプ型電極を用いた2次元数値制御走査により、短周期の厚み誤差成分を高精度に除去することが可能である。3年目(最終年度)においては、考案した2ステップ平行度修正プロセスを市販のATカット水晶ウエハ(25mm×20mm×80μm^t)における厚み分布の修正に適用し、その評価(項目(3))を行った。水晶ウエハ上の各点における局所的な共振周波数を測定し、その値からウエハの厚さ分布に換算して加工結果を評価したところ、修正前には最大108nmであった厚さムラを14nmにまで向上することに成功した。また、ウエハの厚みムラが解消、すなわち平行度が向上することによりデバイス性能を劣化させる不要な副振動が減少し、パイプ電極による修正後には完全な共振特性を得ることができた。これらの成果は、水晶デバイスの高性能化に大きく貢献するものである。
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