本研究は、大面積基板上で広範囲一斉自発的に微細構造を形成する「自発的高次構造成形法」を確立し、大面積縦型素子内に微小なトランジスタ構造単位を多数並列に作り込むことで、従来得られているものより高性能な有機トランジスタを作製することを目的としている。今年度は、主に以下の研究を行った。 (1)有機ナノSITの作成と単一ナノSITの動作特性評価 基板に下部電極、下部半導体層、微細孔付きA1膜、上部半導体層を積層し、単一細孔のトランジスタ特性を導電性AFM探針をソース電極として評価した。細孔径や半導体層膜厚を変化させた結果から、静電界シミュレーションから定性的にデバイス設計が可能なこと、ソース電極が微細孔直上ではなく端部にあるほうが大きなオンオフ比が得られ、縦型としては木きい1O^3近くの値が得られることなどが示された。得られた知見をもとに、これを多数並列に動作させる大面積縦型素子の作成プロセスを検討中である。 (2)高次構造有機ナノFETの作成法の検討 直径数百nmのポリスチレン(PS)球を蒸着マスクとし、SiO_2/Si基板(兼ゲート)上に微細孔を有する下部電極絶縁層を形成し、PS球除去後に有機半導体層、上部電極を形成することによって高次構造FETを作成するプロセスを検討した。絶縁層として、各種低分子有機絶縁材料を評価し、銅フタロシアニンバッファ層上にパーフルオロテトラコサンを蒸着したものがソースとドレイン間の絶縁層として使えることを見いだした。また、PS球の散布の際、溶液濃度を上げてゆくと臨界濃度までは孤立付着した球の密度が増えるが、それ以上では急速に凝集が生じ孤立付着が見られなくなること、臨界濃度は球の表面官能基に敏感であることが確認された。現在、孤立付着した球の密度をさらに増やす方法を検討中である。
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