研究課題
本研究は、大面積基板上で広範囲一斉自発的に微細構造を形成する「自発的高次構造成形法」を確立し、大面積縦型素子内に微小なトランジスタ構造単位を多数並列に作り込むことで、従来得られているものより高性能な有機トランジスタを作製することを目的としている。今年度は、主に以下の研究を行った。(1)高効率有機太陽電池の開発Al/In/C60/CuPc/ITO構造の固体接合型有機太陽電池において、各層膜厚などの最適化によって、光電変換効率1%程度の太陽電池を作製することに成功した。さらに、アノードとしてITOの代わりに表面を酸化させたAg電極が使用可能であることを見いだした。これを利用して、表面酸化Ag/In積層電極を中間電極としたタンデム型太陽電池を作製し、4スタックセルによって解放端電圧1.34Vが得られた。(2)低駆動電圧・高出力電流縦型トランジスタの試作これまでに開発したプロセスを発展させ、200nm径のポリスチレン微粒子を蒸着マスクとして用いることによって、多孔質のゲート電極/絶縁層/ドレイン電極構造を形成する方法を確立し、その上からCuPcあるいはペンタセンなどの有機半導体層と上部電極を蒸着することで、SITタイプの縦型トランジスタを試作した。その結果、2mm×2mmの素子面積内に2800万個のナノSITセルを作り込んだ素子が再現性良く形成され、数Vの動作電圧で数mAの出力電流という、有機トランジスタとしては極めて高い相互コンダクタンスを得ることに成功した。電流on/off比は約500で、まだ改善の余地はあるものの、従来のSITタイプの素子よりも高い値が得られた。また、(1)で得られたタンデム型有機太陽電池と配線接続し、有機フォトトランジスタが動作することを確認した。
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