平成15年度(1年目)の研究により、高い生産性、低コスト化が可能となる簡易な構造でありながら、アンテナの効率低下の主要因であったグレーティングローブと呼ばれる不要放射が生じない導波管スロットアンテナを考案し、その構成に適したアンテナ素子を提案した。これに引き続き平成16年度(2年目)の研究により、提案のアンテナ素子を用いて平面アンテナをミリ波(76GHz)帯で構成、試作し、利得32dBi、アンテナ効率56%という高性能なアンテナを開発することで、提案の素子の有効性を実証した。自動車レーダに適した斜め45度偏波を有し、グレーティングローブが発生しないアンテナを、プリント基板などの損失の避けられない誘電体材料を使わず、金属の射出成型で容易に量産化が可能な中空導波管で実現したのは世界初である。 導波管の管内波長は、原理的に自由空間波長よりも長いため、グレーティングローブと呼ばれる不要放射が、効率低下の本質的な問題であった。そこで本研究では、管内波長を短くするために導波管広壁幅を広く設定した。この場合にスロットからの放射量が低下してしまい、設計不可能となってしまう問題が生じるが、ポスト付導波管狭壁スロットアンテナと呼ばれる新構造の素子を提案することにより、スロットからの放射量を大きくすると同時に、反射損失の小さい素子を実現し、グレーティングローブレベル上昇の原因となるビームチルト設計の手法をとることなくアンテナを設計できた。 これまでに、電磁界シミュレータを用いてアンテナ素子の特性を解析する一方で、本予算により試作したアンテナの特性を、同じく本予算で導入したベクトルネットワークアナライザを用いて測定し、電磁界解析との両面からパラメータスタディすることにより、新構造のアンテナ素子の最適化設計技術を開発した。今後、国内学会、国際学会で発表し、論文にまとめる予定である。
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