研究概要 |
これまで継続的に蓄積されてきた道路,鉄道などの社会基盤施設は,経年劣化に伴う事故が発生するなど,維持管理が重要な問題となりつつある.一般に、設計時に類定された諸条件は,現実の環境条件や構造物挙動と異なるから,実際の供用状態や健全性を経時的にモニタリングして,警告や供用を停止するなどの必要なアクションを迅速にとると共に,適宜合理的な補修対策を施す必要がある.そこで、本研究は,常時微動を利用した長大構造物のヘルスモニタリング法を構築することを目的とする.具体的には,1 長大構造物に適した自律分散型モニタリングシステムの構築 2 常時微動の統計的特性を利用した振動特性同定法の構築 3 同定結果に基づいた現有性能の逆解析法の提案 4 長大構造物への適用を前提としたシステム化の4ステップで行う計画としており,全体では,3ヵ年を予定している.本年度は(1)および(2)の一部を実施した. 本年度は,安価に密な振動計測ネットワークを構築可能なMEMS(Micro Electro-Mechanical Systems)センサシステムと分散データ収集に適した無線モバイル技術よりなる,自律分散型モニタリングシステムを開発した.ここでは,MEMSにデータ解析アルゴリズムを組み込んでデータ収録を効率化すると共に,自己診断機能を持たせ,緊急時などには自律的に警報を発する機能を付与して自律システム化した.さらに,モバイル通信能力を持たせて,分散的環境においてもネットワークとしての機能を確保し,高機能かつ現実的なモニタリングシステムをLAN環境の下で実現した.さらに,次年度に向けた検討として,開発したシステムを実際の長大吊橋ならびに鉄筋コンクリート建物に設置して空間的な振動挙動の基礎的データを得ることに成功した.
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