研究概要 |
京都と奈良に実在する木造建物2例を取り上げ,耐震壁要素の実験結果及び木質構造設計基準・同解説を基に,地震応答解析を行い,木造建物の耐震性能について検討を行い,実在の木造建物の耐震性能の把握と今後の耐震性能評価の為の指標を知る事を目的とした. 取り上げた木造建築物の一棟は,京都市内にある一般に京町家と呼ばれる一方向の耐震性能に比べ他方の耐震要素である壁面・軸組が少ないという特徴がある.またもう一棟は,奈良県桜井市にある田の字型の一階平面プランを有し,二階平面は一階平面に比べて小さい面積であるという特徴がある.両方の建物において,耐震要素となる壁要素と,それ以外に柱の曲げ剛性を考慮した水平力に抵抗する層剛性を算定し,設計基準等で示されている保有水平耐力を用いて,復元力特性の基準耐力・剛性を得た.また,履歴復元力特性の履歴ループの特徴として,既往の研究をもとにして,スリップとピンチングそして繰返し徐荷時の剛性低下を考慮した復元力特性モデルを設定した.地震応答解析で用いた地震波は,1995年兵庫県南部地震で観測された4地点のものを用いた. その結果の概略としては,ほとんどの場合,中小地震時のにおいては,崩壊目安である層間変形角1/120を超えず,大地震時には,崩壊目安を超える結果となった.ここで行った応答解析では,不確定な履歴復元力特性の各パラメタを変化させて地震時応答を予測した.そこで,各パラメタの設定についても,各特徴を有する建物毎に設定できれば,その建物の応答挙動及び耐震性能が,よりよい精度で評価できるものとなる. 次年度以降は,本年度新たに購入した震度計一式を用いて,実在木造建物の振動特性の把握を行い,特徴的な木造建物ごとに,その履歴復元力特性のパラメタの算定と,それらをまとめ,木造建物の耐震性能評価の指標を提案していく事を目的としたい.
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