室内の臭気問題として、高齢者施設内の臭気があげられており、対策が望まれている。今年度の研究では、まず、高齢者施設内の臭気成分を分析し、感覚的に影響を強く及ぼしている臭気成分を明らかにした。その結果、居室ではアルデヒド類、便所では硫化水素、メチルメルカプタンが主成分であることが把握された。 また、臭気対策として、分解による臭気対策の検討を行なった。建材に可視光型光触媒を塗布したものを用いて、光量と臭気物質の分解基本性能の関係を実験的に検討し、実態調査として、高齢者施設内でも特に不快な臭気が感じられる便所を対象として、便所内の壁材に可視光型の光触媒を塗布したものを設置し、間接照明を当て、臭気レベルの測定を行なった。その結果、条件が整えられる実験室では、メチルメルカプタン、アンモニア、ホルムアルデヒドともに、検知閾値以下まで除去されたが、実態調査では、発生量が瞬間的に多くなる時があり、感覚的に明確な効果をつかむことができない場合があった。 さらに、建材として、吸着性能に優れているゼオライトパネルを用いて、臭気物質の吸着、分解に関する基礎実験を実施した。その結果、光触媒を塗布したゼオライトパネルの方が、臭気物質の除去性能は向上した。 今年度の研究成果から、建材としては吸着層を持つ建材を使用する方が、光触媒を用いた分解機能を高めることができると推察された。また、光触媒による分解過程での生成物についても確認する必要があることが示唆された。
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