本年度は、シミュレーションゲーミングの基本システムの開発を行った。システムの開発自体は大学の研究室内で行ったが、全国の景観形成を主題としているまちづくりの関係者にヒアリング調査を実施し、シミュレーションゲーミングのシステムに必要となる要素を明らかにしつつ開発を進めた。結果として、以下の2つの成果を得た。 1.小型CCDカメラと映像通信機器を使用したポータブルシミュレーターの開発 大学内のスタジオではなく、実際にまちづくりが進行している現場で使用するためのポータブルシミュレーターを開発した。これは積木状の模型を組み立てて立体的に表現したまちの将来像を、アイレベルから見て景観や心理的圧迫感を検証するものである。市民が自らの手によって主体的に検討できるように、シミュレーターの形状と操作方法を工夫した。このシステムは、(1)アイレベルに視点をおいた動画を用いて、人間の歩行速度や車の走行速度での街並み景観に関する精密なシミュレーションを可能にした。(2)ワイヤレス通信技術の国際規格である「Bluetooth」を採用して、操作が容易な静止画中心のシミュレーションを可能にした。 2.普及型シミュレーションツール(模型・カード等)の開発 第1に、景観や都市環境のシミュレーションで使用する積木状の都市建築模型の普及モデルを開発した。基本モジュールに従った木製の積木に、「大都市の密集市街地」と「地方都市の中心市街地」を想定した縮尺1/100の建物立面写真を張り込んだ。モジュールの決定等にあたっては、実際のまちづくりワークショップや景観デザインで試験的に使用し、検証しながら開発を進めた。 第2に、ゲーミングの役割設定と進行をサポートする普及版のカードツールを開発した。カードをデジタルデータとして一部書き込み変更も可能とすることで、様々なまちづくりの状況に対応できる汎用性のあるツールとすることができた。
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