今年度は、1)昨年度実施したコーティング材料としての機能の改善方法と、2)遷移金属ボロシリサイドの構造異方性と弾性や熱膨張との関係(本研究では、構造異方性を低減し熱歪などを低減する方向に考える)について関連化合物の基礎物性を調べた。 1-1)実用的な見地から、コーティング基材としてMo_5SiB_2+Mo二相共晶合金を用いていたが、MoSi_2コーティング層および拡散層の形成の速度論、拡散層中の相互拡散について定量的に明らかにするため、基材の母相(Mo_5SiB_2)とMoSi_2それぞれ単結晶を用いた拡散接合材を作製し、反応拡散の機構を解明した。その機構解明により、どの元素を多く界面に注入すると、酸化中の高温保持時の相変態においてMoSi_2コーティング層の消耗が抑えられるかを予測・実験で検証した(下記参照)。 1-2)Mo_5SiB_2とMoSi_2との反応拡散では、Mo_5SiB_2+Mo二相共晶合金とMoSi_2との反応拡散と比較して、反応拡散層の構造が異なる。詳細は論文を参照されたい。MoSi_2コーティング層の消耗を低減するという観点では、反応拡散層であるMo_5Si_3(B)層を形成するために必要なSiの供給元(供給量)が、Mo_5SiB_2とMoSi_2との組合せにすることで増加する。また、パック・セメンテーションにより、Mo_5SiB_2/MoSi_2界面に拡散対より高濃度のB原子を注入でき、そのB原子により、Mo_5Si_3(B)層を形成するために必要なSi供給量が増加する。それはMoSi_2コーティング層以外の供給元からとなる。従って、MoSi_2コーティング層の消耗が抑えられ、寿命が増加する。 2)上記で出てきたMo_5Si_3は複雑な結晶構造を有し、その特性は結晶方位による結合の特徴の差異により異なってくる。本研究では、これまでの他の研究者からの報告も考慮し、Mo_5Si_3のMoを他の遷移金属元素で置換することにより、熱膨張および弾性の異方性の変化を調べた。
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