生体硬組織欠損部の早期修復、完全再建のためには、生体組織にナノ構造や機能が類似し、リモデリングサイクルに取り込まれることにより、自己再生能力を発揮するような、画期的な新材料の開発が不可欠である。生体内の硬組織は、コラーゲン線維の周りに、数ナノオーダーのアパタイト結晶がナノレベルで規則配列した、生体特有の複合的機能を持つ構造材料であることから、硬組織の早期再生を促すためには、新材料に対し、アパタイト/コラーゲンの配向性を付与することが一つの方策である。そこで本年度は、熱処理、ならびに湿式法により、アパタイトセラミックス材料、ならびにナノアパタイト/コラーゲン複合材料に対し、配向性を付与する技術を開発するとともに、ウズラ骨髄骨を用いて、生体硬組織そのものの配向化過程を調査した。さらに来年度からの本格的なin vivo実験に備えて、動物飼育施設の設置を行った。 生体由来の硬組織を利用することで、配向性アパタイトセラミックス材料の作製が可能であり、熱処理温度の制御により、アパタイトを高配向化することが可能となった。こうして作製された一軸配向性アパタイトセラミックスは、予備的に行ったin vitroの細胞分化実験により、強い結晶方位異方性が明らかになり、基板材料としての可能性が示唆された。さらに、生体由来の配向性コラーゲン上に交互浸せき法を施すことで、配向性アパタイト/コラーゲン複合体の合成に成功した。これはアパタイトの自己組織化現象を利用したもので、一軸配向性アパタイトセラミックスに比べ、生体に近い結晶子サイズが実現された。以上の新たに合成された配向化材料は、微小領域X線回折法を用いた結晶学的な解析により、配向性、結晶性が定量的に評価された。さらに、ウズラ骨髄骨への結晶学的なアプローチにより、生体アパタイトの配向化のための最重要支配因子が負荷応力であることを証明した。
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