本研究では、アモルファスシリコン上にニッケルの放射状の分布をつけアニールすることで、ニッケル誘起結晶化により、中心から核発生させ、扇形に2次元的に結晶を成長させ、大粒径の多結晶膜を得ることを目指す。昨年度までにNi濃度分布場の形成法を確立した為、本年度はNi濃度分布およびアニール条件の改良により、シリコン結晶粒の大粒径化と質の向上を試みた。 昨年度までの実験により、直径1mm程度の円状の結晶化領域を形成できていたが、構造解析により、この結晶は微結晶構造を取っていることが分かった。これは、a-Si膜厚50〜100nmに対し、Niを数nm供給していた為、ニッケルシリサイドの量論に近く、核発生が高密度に起きた為と考えられる。そこで、Ni濃度を大幅に下げ、プロファイルの中心部のNi濃度が0.1〜10pm程度と、極疎らにNi原子が存在するよう条件を変更した。このサンプルを急速熱アニールし、ラマン散乱分光で分析したところ、プロファイル中心部が数pmの条件で結晶成長が促進されることが分かった。なお、膜厚50〜100nmのアモルファスシリコンは可視光を良く吸収し褐色であるが、結晶化部は光を良く透過し、白色になった。現在、薄膜X線回折による面内結晶粒径の評価を進めている。
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