本研究ではアモルファスシリコン(a-Si)上にNiの放射状の分布をつけアニールすることで、Ni誘起結晶化を制御し、中心からの核発生と扇形の結晶成長により、大粒径の多結晶膜を得ることを目指す。昨年度までに申請者が開発したコンビナトリアル手法によりNi量の最適化を進め、膜厚50nmのa-Siに対しNiが膜厚換算数pmで結晶化が促進されることを確認した。 本年度は、アニール条件の最適化を進めた。既往の研究では、アニールの温度・時間・昇温速度に加え、プレアニールについてもこれらのパラメータが探索され、グループ毎に「レシピ」が作られてきた。しかしa-Siの成膜条件が変わると「レシピ」は使えず、かつこれらの6パラメータの最適化は非常に困難である。そこで、論理的考察により我々は実験パラメータを昇温速度1つに絞り込んだ。即ち、目的温度までの昇温速度を変えることで、これらのパラメータを一度に振れる。また、一度形成した結晶核は、800℃程度までは合一せずに残る為、結晶化初期の構造も保存される。この方法で、0.2℃/minで700℃まで昇温した際、Ni量が10pmから減少する分布場で粒径30μmの結晶粒の形成を確認した。更に、680℃でアニールを止めたサンプルでは、扇形の結晶粒も確認され、目標とした機構による大粒径化を示唆するもので、現在、検証を続けている。 なお、本研究で利用したコンビナトリアル手法は、別材料でも大きな成果を挙げた。即ち、代表的なナノ材料である単層カーボンナノチューブでは、ナノ粒子触媒の開発が合成法の鍵となるが、本手法により1回の実験での触媒担持条件の最適化を可能とした。
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