再生可能資源バイオマスの熱分解に由来するタールを水素や合成ガスへと変換する触媒の開発及びその作用機構の解明を行ってきた。また、バイオマスは、原料が多様であるため、さまざまなものを対象とした研究も行っている。熱分解タールを水素や合成ガスへと変換する方法として、部分酸化と水蒸気改質があるが、ここでは両方の反応について試験を行ったところ、開発触媒であるRh/CeO_2/SiO_2触媒は、無触媒やDolomite、水蒸気改質用ニッケル触媒と比較して、極めて低温でも高いタール変換効率を示すことがわかった。特に、杉、バガス、稲わら、ジュート、建築廃材、スペントモルトについても性能試験を行った。多くの木質系バイオマスでは、触媒は極めて高いタール変換効率を示すのに対して、スペントモルト由来のタールはそれらと比較して、部分酸化が困難であることも見出した。タールを収集し、ガスクロマトグラフー質量分析計でタール成分の分析を行ったところ、杉のようなバイオマスは含酸素及び炭化水素系の物質が多いのに対して、スペントモルトは不溶性たんぱく質を多く含むため、含窒素化合物が多く観測された。これらの物質の部分酸化がより難易度が高いため、変換効率を低下させていると考えられる。さらに、触媒構造の解析として、X線吸収端微細構造を行った。流動層反応器を用いたタールの部分酸化反応においては、触媒層は酸化的雰囲気と還元的雰囲気を循環することになるが、それぞれにおいて触媒は極めて大きな構造変化を伴っていることがわかった。還元的な雰囲気においては、6nm程度のRh金属微粒子が生成しているのに対して、酸化的雰囲気においては、3個程度のRhからなる酸化物超微粒子が生成し、CeO_2との相互作用も観測された。このような構造が変化が高い触媒性能と強くかかわっていることが示唆された。
|