研究概要 |
(1)共培養系の最適化:肝細胞と骨髄細胞群との共培養について検討した。ダルベッコ変法イーグル培地に上皮細胞増殖因子,インスリン,L-プロリン,ヒドロコルチゾンおよび体積分率で20%の非働化ウシ胎児血清を添加した培地を用いて,肝細胞と骨髄細胞を1:10にて混合播種することにより肝機能発現および維持に効果的な共培養系の最適化に成功した。これにより,肝細胞組織体であるスフェロイド以上の肝機能発現が3週間以上良好に維持できる培養系を確立できた。 (2)サイトカイン徐放性スカッフォルド開発:溶媒キャスト・粒子溶出法により作製したポリ乳酸多孔質体(スカッフォルド)の内外表面を酸性ゼラチンにて被覆した。この材料に中性環境下で塩基性繊維芽細胞増殖因子を加えることで静電的にゼラチンと結合させた。塩基性繊維芽細胞増殖因子のかわりにシトクロムCを用いた最適化の検討により,ポリ乳酸多孔質体の内外表面全てがゼラチンに覆われ,シトクロムCがスカッフォルド全体に均一に固定化できた。さらに,コラゲナーゼ添加によるゼラチンの分解とそれに伴うシトクロムCの徐放を実現できた。また,ゼラチンディスクを生体内に埋植した場合,6週間ほどで生分解されることが確認された。以上より,サイトカイン徐放スカッフォルドが開発できた。 (3)血管新生誘導(移植):サイトカイン徐放性スカッフォルドをラット皮下および腹腔内に移植することにより,スカッフォルド内への血管新生を有意に増加させることに成功した。さらに,遠心分離器を用いた肝細胞播種方法を開発し,スカッフォルド全体に肝細胞を均一に固定化できた。70%肝切除直後のラット腹腔内に肝細胞固定化サイトカイン徐放性スカッフォルドを埋植することで,スカッフォルド内血管新生の増強ならびに肝細胞の生着を実現できた。
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