平成15年度は、船体構造保全情報システム実現のための要素技術として、船体構造保全情報モデルから、強度解析モデルを生成する手法を提案した。主な成果を以下に挙げる。 (1)まず、第一にプロダクトモデルの標準規格であるSTEF AP218を用いた主の腐食損傷を対象とする、船体構造保全情報データベースの構築を行った。 (2)STEP技術の一つであるEXPRESS-Xを用いて、船体構造保全情報モデルから強度解析モデルを生成するのためのフレームワークを提案した。さらにこの提案に基づいたプロトタイプシステムとして、はり解析とシェル解析の概念モデル、及び、Mappingスキーマを作成し、解析モデル生成例を示した。これらの例により、本フレームワークが、船体建造時の情報からの解析モデル生成だけではなく、検査結果に基づいた損傷を有する船体の強度解析モデル作成に有効であることを示した。また、船体構造保全情報システム内の検査履歴データを用いることにより、未来における強度予測が行えることを示した。 (3)船体構造保全情報システムにおける船殻構造情報はSTEPのAP218(船体構造情報)に基づいた表現になっている。よって、提案した強度解析モデルへのMapping手法は、プロダクトモデルに対しても適用することが可能である。本手法の実現により設計プロセスの効率化も期待できる。 (4)船体構造保全情報モデルと、強度解析モデルについて、標準的な概念に基づくデータモデルを利用することにより、長期における「データ」の利用(Long Term Data Retention)だけでなく、このような「解析モデル生成の知識(Mappingの知識)」の長期的・汎用的な利用が期待できる。 また、今後の課題としては、以下の点が挙げられる。 (1)本手法を実際的な船体構造に適用するためには、曲面・曲線から表現される3次元構造においても適用可能な、Mappingスキーマの作成が必要である。 (2)本研究で生成した有限要素モデルはメッシュを生成し材料特性を与えるところまでであり、実際の解析の際は拘束条件や荷重条件が必要となる。それらの情報の自動生成のためには、シェル解析モデルに境界条件を定義するとともに、船体構造保全情報データベースに設計荷重の情報を格納する等の必要がある。
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