本研究は指向性ボアホールレーダの開発を目的としている。1本の坑井のみで坑井から数十m以内に存在する地下き裂、断層などを10〜500MHzの電磁波により「3次元的な物体像」を推定可能にする。このため、光電界センサアレー型ボアホールレーダを開発し、フィールド実験で実証する。本年度は「3次元的な物体像」を推定可能にするためのハードウエア部の整備を中心に研究活動を行った。特に、光電界センサアレー型ボアホールレーダシステムの試作とその特性坪価を行った。本予算によって特に試作した設備は以下である。 1.送信アンテナからの放射電力の改善:送信アンテナへ給電する光リンクシステムの出力電力を増加させ、送信アンテナ給電点には+20dBm以上のパワーをもつ高周波信号を給電することを可能にした。また、周波数帯域幅は3MHz-900MHzとなり、広帯域でのボアホールレーダ計測を可能にした。 2.地表装置とゾンデ間の光信号伝送の7チャンネル化:ゾンデ内で7台の光電界センサを装備した上で深度37mの計測を可能にするため、複合光ファイバケーブルを製作した。送信信号、方位計信号とあわせ23心の光ファイバケーブルを複合することになる。 3.受信素子の増加:受信素子数が増えれば、高精度なレーダイメージングが可能となる。今年度は受信素子である光電界センサを2台増やした測定システムを構築した。 4.試作レーダの特性計測のための実験場整備:大学構内に実験用坑井2本を掘削した。深度は20mであり、13.5m間隔とする。コアサンプリングとレーダ計測によって、周囲の媒質定数を把握した。 上記の設備を用いて、レーダシステムの評価実験を行った。特に、素子を多数坑井内に配列した際のアンテナ素子間の干渉、インダクタンス装荷によるアンテナ感度の向上、直交ループ・ダイポールによる偏波に対する感度検証を行った。
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