研究概要 |
動物には一方向のプロトン輸送から形成される多彩な酸性環境(胃内腔、骨吸収窩、尿細管、膀胱、輸精管および細胞内オルガネラ)が存在する.酸性環境の異常は胃潰瘍,骨粗鬆症,大理石病,ガン転移,感音性難聴,'腎アシドーシス,不妊症など様々な疾病と密接に関連している.これまで,酸性環境に関しての研究は分子・細胞レベルでの研究が中心であった.しかし,疾病との関連で酸性環境を考える上では個体レベルでの研究が必須であることが明白である.研究代表者らは,酸性環境の形成に中心的な役割を果たしているのは,液胞型プロトンATPase(V-ATPase)とよばれる複数のサブユニットからなるプロトン・ポンプに着目し、これまで、ジーンターゲティング法により作出したV-ATPaseの欠損マウスの表現型を詳細に調べ,V-ATPaseを欠損した胚は胞盤胚期まで発生するが,着床直後の段階で致死となることを示した.さらに,マウスおよびヒトのV-ATPaseの複数のサブユニット・イソフォームを同定し,その発現様式を明らかにしてきた.今年度は、これらのサブユニット・イソフォームのコンディショナル欠損マウスを作出し、V-ATPaseの特異的な組織における生理機能、特に遺伝病との関連および発症メカニズムを詳細に解析できる動物モデルを開発した。さらに、サブユニット・イソフォームと緑色蛍光タンパクとの融合タンパクを発現するマウスを作出し、酸性環境をin vivoで観察する系を構築した。
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