研究課題
昨年度に決定したロドプシンの2.2Å分解能での基底状態結晶構造は、インバースアゴニストである11シスレチナール発色団及びその結合部位や蛋白質表面の詳細構造の点で新たな貴重な情報を含んでおり、様々なシミュレーション研究の発展を可能とした。今年度は、密度汎関数法に基づくQM/MM分子動力学計算により、その構造の比較解析を行った。その結果、高感度光センサーとして働くために重要な発色団C11=C12二重結合回りの捩れ角が、あらかじめ一方向に偏っていることが明らかになった。従って、このような実験・理論両面からの研究が非常に有効であることが示されたことから、昨年度作成したロドプシンの光反応初期中間体であるバソロドプシンの結晶構造モデルについても同様の研究を開始した。一方、バソロドプシンでの非常に捩れたオールトランスレチナール発色団及び周辺アミノ酸の緩和過程を更に明らかにするために、次の中間体であるルミロドプシンを160K近傍で捕捉し、X線データ収集・解析を行った.その結果、複数の結晶から再現性のある差フーリエ電子密度が得られ、2.8Å分解能でモデル構築を行うことが出来た。発色団レチナールはほぼ完全なオールトランス型に緩和するとともに、近傍膜貫通ヘリックスに局所的な歪みが生じるという、活性化過程に重要な構造変化プロセスが明らかになった。このような結果に基づき、新たなロドプシン変異体をデザインして安定な活性型を作成する研究を開始するとともに、既知の構成的活性型変異体の大量発現から結晶構造解析までのプロセス確立を進めた。また、G蛋白質との複合体の三次元結晶化についても、脂質二重膜構造を保持した方法による試みを開始した。
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