研究概要 |
これまでに蓄積してきた様々な刺激に対する生理応答データについて検討したところ,味覚および嗅覚刺激に対する生理応答データに比較的個人差が生じやすいことが示唆された。そこで特に個人の価値観の差異を反映しやすいと考えられる嗜好性味覚刺激のひとつとして,チョコレートを例に取り上げ,味を変化させたり自然由来の香りを添加したりした数種類の試験片を作成し,味覚・嗅覚刺激実験を行うこととした。【実験方法】被験者は女子大学生18人とした。実験は以下の2つのパートに分けて行った。1)パーソナリティテスト:味覚刺激前に特性不安,タイプA型傾向,性役割パーソナリティを,それぞれ日本語版STAI(水口・下仲・中里,三京房),A型傾向判別表(前田,1985),BSRI日本語版(東,1990/1991)により測定した。これらの所要時間は約20分であった。2)味覚刺激と測定指標:実験は気温約24℃,相対湿度50%,照度50lxに調節した人工気候室内で実施した。被験者は閉眼座位とし,各生理指標の安静状態を20秒間以上確認した後,舌を出すよう指示を与え,ピンセットを用いて舌の中程にミルクチョコレート0.2gを置いて口を閉じさせた。20秒後に嚥下するよう指示を与え,90秒間後味を評価させた。この間,脳血液動態を左右前頭部で近赤外線分光分析法にて,また血圧・脈拍数を左手中指でフィナプレス法にて毎秒測定した。測定終了後に快適感その他に関する主観評価を実施した。【結果】そのチョコレートも主観評価では「快適」と評価されたが,中では苦みを強くしたチョコレートの快適感が最も高かった。またどのチョコレートでも脈拍数は前値に比較して優位に上昇し,脳の活動も亢進する傾向が認められた。現在さらにデータを解析中である。
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