研究概要 |
昨年度は女性被験者においてチョコレートを用いた味覚嗅覚刺激実験を実施し,各刺激に対する主観評価の検討ならびに自律神経活動,脳活動の検討を行った。本年度はさらに生理的多型性へのアプローチとして,特に脳血液中ヘモグロビン濃度の絶対値に着目し,パーソナリティとの関連性を検討した。被験者は20代の女子18名とし,味覚嗅覚刺激に先立ち,特性・状態不安,タイプA型傾向,性役割パーソナリティの3種のパーソナリティを,それぞれ日本版STAI, KG式日常生活質問紙,BSRI日本語版にて測定した。その後人工気候室内で0.2gのチョコレート片を用いて110秒の味覚嗅覚刺激を与え,その間左右前頭部において脳血液中ヘモグロビン濃度を近赤外分光分析法(時間分解分光法)にて連続的に測定した。結果として16人の被験者でヘモグロビン濃度の測定に成功し,タイプA型傾向および状態不安の各パーソナリティについて群分けした際に,タイプA群とB群間では脱酸素化ヘモグロビン濃度に,状態不安高群と低群間では酸素化および総ヘモグロビン濃度に,それぞれ有意な差があることを見出した。このことより,時間分解分光法を用いた脳酸素代謝の絶対値計測によって個々人の本来持つ生体の特性を明らかにし,かつパーソナリティという観点からその多型性にアプローチすることが可能であると考えられた。 今年度はさらに自然と人との関係を検討するために森林浴実験を千葉清和県民の森で実施し,森林浴前(朝),森林内での歩行前後(午前中),森林内での座観(椅子に着座して景色を眺める)の前後(午後),森林浴後(夕方)における各種生理指標の測定を行った。また対照として千葉駅前にて同じプロトコルで測定を行った。その結果,様々な指標の経時的変化の関連性(朝から夕方にかけて,各指標がどの程度関連性を持ちながら動いているか)に関して森林と都市で差があると同時に個人差がある可能性が認められた。現在さらにデータの解析を行っている。
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