東京大学大学院、藤原徹先生の御好意によりβサブユニットの上流転写調節領域のデリーションクローンにGUS遺伝子が結合されたコンストラクトを使用することができた。我々はこのデリーションクローンを用いて、未熟種子を用いた一過的発現を解析することにより窒素応答生配列を決定することを試みた。その結果、上流-732bpまでのデリーションはGUS活性に影響を与えなかったが、そこから101bpデリートするとGUS活性が1/5にまで減少した。 βサブユニット上流転写領域における-732bpから-631bpまでの間に窒素応答配列を確認するために、この101bpをCaMV35Sプロモータ領域のEcoRV切断部位に逆方向に挿入したもの、正方向に挿入したもの、および正方向にタンデムに挿入したコンストラクトを作成した。その結果、正方向にタンデムに結合させるとCaMV35Sのみの場合と比較して2倍程度のGUS活性が認められた。従ってこの101bpの間に窒素応答生領域があることが示された。 ダイズ種子における窒素に応答した転写活性化因子を同定するために、窒素欠乏状態で栽培した根粒非着生ダイズに高濃度硝酸を2日および4日供給し、それぞれ未熟種子を得た。それぞれから全RNAを抽出し、ミヤコグサマクロアレイにハイブリダイズした。窒素飢餓のまま栽培したダイズより得られた未熟子葉の全RNAと比較し、硝酸供給2日後および4日後では2.5倍に転写量が増加した遺伝子はわずか7個の遺伝子であった。これらのうち2つの遺伝子についてはすでに窒素供給の増加によってその発現量が増加することが知られている60Sリボゾーマルプロテインおよび26SrRNAであった。 植物体に対する高濃度硝酸の供給に対して、未熟種子では転写活性が著しく増加することはなかったことから、種子に対する供給窒素濃度増加のシグナルはリン酸化を介して行われている可能性が考えられた。
|