1.食物アレルギー発症メカニズムの解明(国立南福岡病院との共同研究) 牛肉アレルゲンであるウシ血清アルブミン(BSA)の主要なIgE結合エピトープEXXVを含むペプチド2種、即ち、HPEYAVSVLLおよびVMENFVAFと、これらに含まれるE残基をD残基に置換したアナログペプチドを合成し、ELISA法によりこれらのIgE結合能を調べた。その結果、D置換によりIgE結合能が著しく低下した。従って、BSAエピトープペプチド中のE残基がIgE結合に重要であることが明らかとなった。ヒト血清アルブミンでは、E残基の部分がDになっており、この違いを患者はアレルゲンとして認識していると考えられた。 2.食物アレルギー寛解メカニズムの解明(関西医科大学との共同研究) 低アレルゲン化小麦粉の負荷により症状の改善が認められた患者について、負荷前と負荷途中(この間、約1年半が経過)とで、患者末梢血リンパ球(PBMC)の遺伝子発現に変化がみられるかどうかを網羅的に解析した。即ち、PBMCを抗原刺激した後、mRNAを抽出し、増幅の後、DNAチップ解析に供した。その結果、IFN-γなど6分子の発現が低下した一方で、IFN-α13など3分子の発現が亢進したことを明らかにした。 3.抗アレルギー食品設計基盤の確立(静岡県農業試験場との共同研究) 抗アレルギー食品設計の一環として、ムギにおける低アレルゲン性品種の選抜を行った。国内外の324品種を入手し、ELISA分析により、含有アレルゲン量を比較した。その結果、品種によって含まれるアレルゲン量には数倍程度の差があることを明らかにした。アレルゲン量の低かった品種は、EINKORN、ROUMANIA KOMUGI、ILINIAZA、HSIN MAI 2などであった。
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