(1)培養系におけるAlexandrium tamarense共生細菌群集の解析:16S rRNA遺伝子FISHの条件検討及びCARD法による蛍光増幅手法の確立を行ったが、自家蛍光によるマスキングが強く、細菌の局在性を十分に確認するに至らなかった。藻類細胞からの細菌の分離培養においては、複数のRoseobacterグループの細菌が分離された。 (2)培養系におけるHeterocapsa circularisquama共生細菌群集の解析:西日本各地から分離された12の培養株を用いて、PCR-DGGE法による共生細菌群の多様性解析を行い、A.tamarenseのケースとは異なる共通細菌種(未培養CFB)を見出した。 (3)自然海水中におけるA.tamarense共生細菌群集の解析:前年度に同定した複数の共生細菌可能性種のうち、天然海水から採取した藻類細胞から検出されたのは、Delftia acidovorans(又はその近縁種)のみであった。また、広島湾奥部で採取した海水を用いて、BrdU-DGGE法による解析を行ったところ、活発に増殖する細菌の一つとして、同じDelftia acidovorans(又はその近縁種)が検出された。このグループの細菌は、海洋の浮遊環境ではほとんど見られない細菌種であり、藻類との共生によって、海洋におけるニッチを獲得していることが示唆され、微生物生態学的観点から非常に興味深い結果が得られた。 以上の成果は、3つの国内学会(第7回マリンバイオテクノロジーシンポジウム、第20回日本微生物生態学会大会、平成17年度日本水産学会大会)および、第10回国際微生物生態学会において公開され、一部は学術論文として国際誌への投稿を準備中である。
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