Th1型サイトカイン産生を誘導する、CpGおよび熱処理リステリア(HKL)死菌抗原を用いてイヌのアレルギー反応を抑制する治療法開発の可能性について検討を行った。まず、イヌにおいてIFN-γを誘導するCpG配列を同定するために、各種CpG配列についてイヌ末梢血単核球からのIFN-γ産生を測定した結果、イヌにおいて高いIFN-γ産生能をもつ配列一つを同定した。このCpG配列はIL-12mRNA発現を誘導し、IL-4mRNAを誘導することはなかった。一方、HKL抗原は、イヌにおいてIFN-γ産生を誘導したが、供試犬の約50%においてIL-4発現も認められた。 これらTh1誘導能をin vivoにおいて検討するために、実験的スギ花粉感作犬に対して投与試験を行った。その結果、Th1サイトカイン誘導CpG投与群においては陰性対照と比較して明らかな反応が認められなかったが、HKL抗原については末梢血単核球のIFN-γ産生を誘導するとともに、皮内反応の感度を低下させ、肺肥満細胞の浸潤も抑制することがわかった。 一方、これらアジュバント療法を実現するために、自然発症動物モデルとしてイヌのアレルギー性鼻炎およびアトピー性皮膚炎の症例についてそのアレルギー反応を詳細に検討した。イヌのアレルギー性鼻炎において抹消血単核球は感作抗原に対してTh2反応を示すことがわかった。アトピー性皮膚炎においても末梢血単核球はTh2細胞特異的マーカーであるCCR4を高発現していることがわかった。また、病変部皮膚においてもケモカイン、thymus-activation and regulated chemokine (TARC)が発現していることがわかった。 以上のことより、本研究成果はTh1反応を誘導するアレルギー治療法を臨床的に実現するために必要な情報を提供したと考えられる。
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