異なる配位子を同一分子内に持つハイブリッド型アート錯体の場合、個々の配位子の転移能(反応性)の違いが錯体の反応にとって極めて重要となる。よって、アート錯体上の転移能を理論的に順列化・数値化することは、機能性錯体のデザインおよび新規反応設計に有効であると考えられる。実際、生体内金属酵素などは、配位子の転移能の違いを有効に活用し、反応を非常に効率良く選択的に触媒化している。そこで、ハイブリッド型アート錯体の転移能をH(s軌道)、C(sp、sp2、sp3、および1°、2°、3°)、ヘテロ元素に分類して高精度量子化学計算を用いて解析を行い、中心金属ごとにまとめた数値順列化を行った。また、転移能を制御し得る要因を軌道解析や遷移構造解析によって明らかにした。 以上の反応解析によって得られた知見をもとに新規反応や新規錯体を設計し、不飽和結合へのシリル基の導入反応や芳香環への直接アルミニウム化反応など有機合成に有用な反応を見出すことができた。
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