研究概要 |
(1)健康男性767人の5年間の体重変化とベースライン時血清レプチン値との関連をベースライン時のBMIと年齢を調整して調べたところ、両者に有意な関連は認められなかった。ヒトにおけるレプチン抵抗性の存在を示した結果であると考えられた。 (2)ベースライン血清レプチン値と血圧値との関連をインスリン抵抗性のHOMA指数を考慮して検討したところ(男性2,017名)、インスリン抵抗性のない非肥満者においてのみ血圧値とレプチン値に有意な関連性が認められた。また、この関連性は拡張期血圧において特に強かった。レプチンの交感神経系亢進作用が示唆された。 (3)白血球数を従属変数、レプチン値、年齢、BMI、身体活動量、飲酒習慣、喫煙習慣を独立変数とした重回帰分析において(男性1,082人、女性200名)、レプチン値と白血球数の間に有意で独立した関連が認められた(男性:標準化β=0.17、P<0.001、女性:標準化β=0.31、P<0.001)。肥満者でしばしば認められる白血球数の上昇は肥満者における高レプチン血症によって引き起こされているかもしれないことが示唆された。 (4)40歳代の健康男性625名を対象とした分析において、個人ごとの体重変化を年齢に対して回帰させた直線周囲の標準偏差(Root-mean-square-error : RMSE)を用いて算出した20歳代からの体重変動と血清レプチン値との間には肥満度や体重変化の傾きと独立した有意な関連が認められ、レプチン値の個人差が長期的な体重変動によって規定されている可能性があることが示唆された。 (5)自覚的ストレスがかなり多い、やや多い、ふつう、少ないの4群における血清レプチン値(ng/ml)はそれぞれ3.54、3.32、3.26、2.85と有意に異なり、この関連は肥満度や他の生活習慣と独立していた(男性1,129名)。自覚的なストレスが血清レプチン値を上昇させる作用があることが示唆された。
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